• 白い猫が死んだとき

白い猫が死んだとき

私の髪はまだ短く 化粧なんてしたこともなかった
空き地の草や木の実を集めては心満たされて
服についたひっつく実を懸命にはがしていた

白い猫が死んだとき
小さな子供たちはふざけて走りまわり
沢山の大人は酒を飲んで嘘をはべらして笑っていた


けれど確かに猫の身体は温みをもっていて
その毛並みは心地よい柔らかさ

私はそのことを忘れてはならない

私はそのことを忘れてはならない


蝉の声を聴けば思い出すの
生きるちから 死の匂い

20160817
  • ユーカリのあなたへ

青白い緑の葉
上を向く細やかな白い粒
あなたにきっと似合うのでしょう

命 木から落ちてしまったけれど
きっと一等に強い優しさを備えている
微笑みは声にならない 上品なユニークさ

いつか抱きしめてほしい
そうすれば抱き返すことができるから

私 あなたの細胞を携え生きている

20160331
  • 手に触れれば

手に入れれば人生が変わると思っていたの

大きな黒色の革鞄
赤いオープンカー
優しくて大らかな友人

人生は思うように変わると思っていたの

小さなゴールドのネックレスを身につければ
豊かなワインをひとくち口に含めば

なのにある程度の高揚しか残らないものだから
私は地団駄を踏んで踠いている

本当に欲しいもの
どこにいるかもわからない あなたの手に触れれば
人生は変わらずとも 私は変われるだろうか

20160201
  • 紫色の花

小さな男の子 楽しげに
折り紙でつくった 紫のチューリップ


きれい きれいな色
折り目のずれた それはそれは立派な花


歌にあるような 赤 白 きいろではなく
大きな大人は それを花だとは認めてはくれないけれど


いつか 紫のチューリップ
両手いっぱいに抱えて会いにいく

きれいだねってささやいて
小さな男の子は相づちを

20160117