- 白い猫が死んだとき
白い猫が死んだとき
私の髪はまだ短く 化粧なんてしたこともなかった
空き地の草や木の実を集めては心満たされて
服についたひっつく実を懸命にはがしていた
白い猫が死んだとき
小さな子供たちはふざけて走りまわり
沢山の大人は酒を飲んで嘘をはべらして笑っていた
けれど確かに猫の身体は温みをもっていて
その毛並みは心地よい柔らかさ
私はそのことを忘れてはならない
私はそのことを忘れてはならない
蝉の声を聴けば思い出すの
生きるちから 死の匂い
- ユーカリのあなたへ
青白い緑の葉
上を向く細やかな白い粒
あなたにきっと似合うのでしょう
命 木から落ちてしまったけれど
きっと一等に強い優しさを備えている
微笑みは声にならない 上品なユニークさ
いつか抱きしめてほしい
そうすれば抱き返すことができるから
私 あなたの細胞を携え生きている
- 手に触れれば
手に入れれば人生が変わると思っていたの
大きな黒色の革鞄
赤いオープンカー
優しくて大らかな友人
人生は思うように変わると思っていたの
小さなゴールドのネックレスを身につければ
豊かなワインをひとくち口に含めば
なのにある程度の高揚しか残らないものだから
私は地団駄を踏んで踠いている
本当に欲しいもの
どこにいるかもわからない あなたの手に触れれば
人生は変わらずとも 私は変われるだろうか
- 紫色の花
小さな男の子 楽しげに
折り紙でつくった 紫のチューリップ
きれい きれいな色
折り目のずれた それはそれは立派な花
歌にあるような 赤 白 きいろではなく
大きな大人は それを花だとは認めてはくれないけれど
いつか 紫のチューリップ
両手いっぱいに抱えて会いにいく
きれいだねってささやいて
小さな男の子は相づちを