蕎麦屋と瓶ビール 2019.04.8

Lagar_201904_02

出窓にある観葉植物を撫でながら、
彼女は缶ビールを飲んでいる。

「まだ明るい時間に、品の良い蕎麦屋で瓶ビールをグラスに注ぐ時、大人になって良かったんだと心から思う。
だけれど同時にね、今が、今、であることが信じられなくて思わず泣きそうになる。」
「ファミリーレストランでキッズプレートを頼んでいた頃は、朝が来るのも、夜が来るのも嬉しくて。
色んなことがあったはずなのに、周りには愛が溢れていたことしか覚えていないの。」
「物事や時代に、終わりがあるなんて考えた事もなかった。
私はこれから先、本当の哀しみにしっかりと微笑んだり、今は想像もつかないような幸福に泣いてしまったりするのかなあ。」

彼女は諦めたように微笑みながら、
少しぬるくなった缶ビールに口をつけた。
「そんなことを考えていたって、仕方がないのにね。」